2013年7月11日木曜日

鋳物を扱う者に「神」が宿る そんな気がした 広島の友鉄工業 ものづくりストーリー リスペクト

十何年か前、まだ独身で友人と毎週のように広島の芸北にスキーに行っていたころ 雪がこの工場当たりから道路に積もる という記憶が有った。
まさか その目印としていた工場にものづくりの勉強に行くとは その当時思ってもいなかった。
鋳造メーカーとして有名な友鉄工業株式会社
この度案内していただけるのは、会長である友廣さん
4年ほど前にあった「技能伝承セミナー」で知り合い 本物を追及される方だとその時から感じていた。 いつか現場を見ることができれば と言う思いが 現実化した。
色々なメディアや情報では「マンホール鉄蓋」の製造が一番表に出ており
私もマンホール鉄蓋が一番なのか と考えていたが、 工場を拝見させてもらって 自分のヌルさに反省した。 やはり自分の目で見ることが真実である と実感した。
(マンホール=上下水道などに通づるコンクリート部も含めた穴全体の事を言うので、ココではその一部の部位であるマンホール鉄蓋と表現します)

この日も30度を超える猛暑日
特別な用事もあり、電車で伺うことにした。
大阪の高校を卒業して広島に来て20年
初めてJR可部線に乗った。
2両編成で とっても田舎なローカル線
このローカル線 以前はもっと奥まで走っていたんだけどコスト削減で可部駅以降休線になっています。
しかし、2015年 全国で初めて一部休線を復活させる話が決まっています。
鉄道マニアにはたまらない話ですよね。 全国初ですよ!



可部駅から友鉄工業㈱の事務所まで徒歩で行く事にした。
猛暑の中の徒歩は辛い でも何か発見が有るかもしれない。

ほら、有った!

広島市内に残る老樹の一つとして貴重なモノらしいです。


事務所に入って、まず通された別室で お茶を持ってきてくれました。
よく見ると 氷が○形になってる。猛暑の時のこの演出は涼しげ
ちょっとしたところのこだわりを感じます。


で、時間が余っても暇にならないよう「自社通信紙」が置いてある
中には、クイズも…
社員さんが考えて掲載されてる。
何ともフレンドリーな社風なんだろう!
しばし、クイズをしながら待つ


しばらくして 友廣さんが出てくる。
「今日は、よろしくお願いいたします」

会長室で、いろいろ会社の歴史を聞く 創業して50年
「継続は力なり」と言う 50周年記念誌を頂いた。
中には、すざましい苦難を乗り越えたストーリーが刻まれている。
ページをめくりながら 私の会社も このような会社になれるだろうかと ふと思う

早速工場の見学へ

本当は、近い所から工場を周っているのですが、
ココでは、ものづくり順に紹介したいと思います。

まず、お客様から頂いた図面をCAD CAMに起こします。
写真は有りませんが、そういう専門のCADCAMルームで精鋭の方々が3次元の図面を制作していっていました。
そして、発泡スチロールを切削していくマシンに出力させます。
何台もの切削マシンが夜中も動いている。 昼も稼働し夜は帰る前にセッティングして 朝来たら出来上がってるそういう感じだそうです


とても長いモノ 複雑なモノも再現が可能です。
切削したパーツをくっつけて一つの発泡スチロール型を制作する。


自分が訪問した時には、某自動車メーカーのドア部分の金型を作るための発泡スチロール型が
職人たちの手で組み込まれていっていた。

自分は、木型で鋳造の型を作る事しか知らなかったので
この発泡スチロール型にビックリ!
木型より加工が簡単で複雑な再現もできる
何より、コンピューターで手軽に出来る世界が有ることに
グッと「身近に作りたいものを作れる」 という嬉しさを感じた。
ただ、この型を見た時、鋳造工程特有の上型と下型に分離する工程
あまりにも型が複雑すぎるのでどうするのだろう… と疑問に思ったが
ココでは聞かなかった。
後程、目から鱗の手法が!
(その世界じゃ常識の手法なのかもしれないが 少なくても私はびっくりした)
これは、また 後程。。

こうやって作られた発泡スチロール型は20km離れた鋳造工場に運ばれる。
発泡スチロールに特殊なコーティング材を塗布し
樹脂を混ぜた砂の中に埋める


どうやら このまま注湯してしまうとの事。

この時 先ほどの複雑な発泡スチロール型の疑問で初めて気づく。
自分は、一応鋳造の教育も受けている。
まず、木枠に砂を敷いて、木型を半分木枠から出るように砂を押し固め
更に上にもう一つ木枠を乗せ白い粉をまぶし(離形材)また砂を押し固めていく
そして、上の木枠と下の木枠を分離させ、中の木型を取る
いわゆる そこが空間になるわけだから 湯を入れるとその空間に鉄が入り鋳鉄となる。

型は取るものばかりだと思っていた。
しかし、この工法は、
とてつもなく熱い溶けた鉄を流し込むことによって
発泡スチロールを砂型の中で一瞬で溶かして燃やしてしまうらしい。
そして空間になった所に溶けた鉄が入り込むわけだから
確かに! そのままの形状が鉄で再現されるわけです。

なるほど だから 木型より 複雑な形状で低コストで短納期でお客様にお渡しできる製品が完成する訳です。
最短だと図面から製品になるまで1週間ほどでやってしまうそうです。
木型だと そうはいかないでしょう。

大きい製品も難なくこなす その仕組みに感動です。

もちろん、上型下型で注湯する製品も有ります。
それがこんな感じ。
デカい!! そして 上型下型の2分するのは複雑な形状を取りにくいと思っていたが
なんだ この型は! めちゃくちゃ複雑ではないか!
やっぱり すごすぎる。


さて やはり鋳造工場でのメインイベントは注湯作業。
とっても熱く熱せられた鉄を入れ込む作業だ。

しかし、単純な作業ではない とても神聖な作業だと感じた。
JIS規格も取得しているため製品として出すときには、ちゃんと決められた品質で出さなければならない
更に、お客様によってレシピが違うという
鋳込む前にちゃんとレシピ通りの成分がチェックをし
サンプリング検査の様子 この後コンピューターで分析する

成分通りであれば砂型に鋳込む
これは、是非 映像で見て頂きたい


余談だが、先ほどのレシピ
改定する毎に履歴がちゃんと残っていて ここまでしっかりと文書管理をされている企業は 久しぶりに見た。
品質には、ものすごく徹底していて
冷えた鉄のサンプリングも毎回行っており、
破断検査 材質検査 表面検査など 多数の検査記録が鋳込みを行った数だけ記録されているとの事
全てに対してトレーサビリティー(追跡)が出来るようになっている。





冷めた型は 超巨大ブラスト機の中に入って 砂型の砂を除去する。


これで製品化で発送なのかと思いきや
次なる 加工も友鉄工業では行っているという
五面加工機
これもとてつもなく大きい切削機だ。

これで、図面通りに切削していくのだそうだ。

この一連の現場を見させていただいて
鋳造メーカーだが 鋳造メーカーではない と言う所を気づかされた
造形で形を作り 鋳造で鉄製にし、加工で寸法をだし、見栄えも良くする

「鉄をゼロから思いどおり形にする会社」

そのものづくりの流れを一元化した会社だった。

最後に話をマンホール鉄蓋に戻そう。
鋳造で作られたマンホール鉄蓋。
説明で知ったのだが、1枚1枚の裏側に製造番号が打たれている。
鋳込む前の砂型に一つ一つ番号を入れている
これによって、いつ、どの炉で、鋳鉄の成分は… という 細かい所まで追跡できるようになっているという。
スゴイ!

出来上がったマンホール鉄蓋は、20km先の工場まで持ってこられ
紛体塗装 乾燥させるのだが
乾燥炉も非常にコンパクトで省エネが施されている事に感心した。

紛体塗装


乾燥炉

このマンホール鉄蓋も やはり品質検査を欠かさないという


いつでも行政から注文が来ても良いように ある程度ストックしてくれているという。

確かに 我々 道路を使う国民は 待ってくれないですから。
在庫を持つというのは、負担になるはず。 国民を代表してお礼を言いたい。


とにかく 友鉄工業は鉄をゼロから自由に形にする すべてのノウハウが詰まっている会社
そして、社員みんなが活き活きと働いている 自分の仕事に誇りをもって仕事をしていると言う事が分かった。
なんと すれ違った社員 全員から挨拶をされたのは初めてではなかろうか。
教育も品質管理も徹底している そして 必要な管理体制はしっかりと揃っている。
必要な管理体制は自社で整える能力をしっかりと持っている会社だと感じた。


最後に
バイク乗りの私から 友廣さんに どうしても聞きたい質問が有った。
雨の日、バイクで走行する時 マンホール すごい怖いんですよ!
と尋ねた所

今 アスファルトマンホール鉄蓋を薦めていっているんですよ。 と答えてくれた。
アスファルトマンホール

これ! すごい良いじゃないですか!

私からの行政への届かぬ願いだろうが・・・ 
全部のマンホールとは言わない せめてコーナー部のだけ 
このマンホールに代えてほしいとせつに願う。




次回 ものづくり現場には どんなストーリーが待っているかな


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