2013年1月13日日曜日

職人プレミアム 伊勢型紙 内田薫「俺の代で終わりだな…」

職人プレミアム オーナー小林です。
私は現在広島に住んでいるが、たまたま正月を大阪の実家で過ごし
その流れで三重県鈴鹿市の伊勢型紙の伝統技能を見に行きました。


事の流れは、川崎市の灯り製品を制作プロデューサー 高橋完治氏からの
職人プレミアムショップへの伊勢型紙灯りの出品をお願いされたからである。

内田職人の工房へ到着したのは、昼過ぎだった。
住宅街の中にたたずみ、1階は保育園となっていた。
奥さんが経営しているということで、伊勢型紙製品だけでは食べていけないとの事だ
その2階に上がらせてもらう。

6畳くらいの部屋に大きな机が2つ並べられ 民俗資料や制作した型紙、切彫り刀が埋め尽くす。
壁には、F1の激走を描いた伊勢型紙が飾っている。
鈴鹿はF1の街 以前F1ドライバー ミキ・ライコネンが鈴鹿に訪れた時に、
本人にプレゼントするという事で内田職人が制作した。
次のシーズン、ミキ・ライコネンは総合優勝を果たしたという。
(伊勢型紙は、2006年マクラーレンMP4-21 ミキ・ライコネンは2007年にフェラーリに移籍 総合優勝)


少し、ここで伊勢型紙の説明をしよう
元々は、着物などの生地に模様を印刷する型紙として流通した商品です。
型紙は、薄い和紙を柿渋で何層にも重ね接着し、ウルシなどでもコーティングした物を使用
更に、模様を彫るときは、型紙8枚を重ねて一気に掘り進める。

型紙8枚は、相当な厚さとなるため 常識では細かい切り抜きなんて不可能だと思っていた。
しかし、内田職人の道具を見て震えた。
このような刀は見たことが無い。


刃はものすごく鋭く研がれている。 そして先端は異常にとがっている。
この先端が、感じたことのない職人フォースを放っている。

実際に、内田職人に実演してもらった。
伊勢型紙には、引き彫り・突彫り・道具彫り・錐(きり)彫りの4種類があり
内田職人はその中の突彫りの一人者と言う。

最初は、スゴイ鋭利な刀なのに 何故 突彫りと言うのだろうと疑問に思った。
しかし、実演を見てすぐ納得した。

私は、市販されているカッターナイフ(ペン型)でもマネが出来るのではないかと
考えていたのだ。
型をカッターでなぞっていくことで、切り抜いていく…

しかし、硬いコーティングされた和紙8枚を一気にカッターナイフで切りぬくのは不可能
どうなるか、想像はできると思う。

では、どうしているのか…
そもそも、内田職人が使用している刀は、カッターナイフと言うより小さいノコギリと言った方が
表現はより近い。
1mmも満たない穴に刀を射し込み、押し引きで刀を進めていく。

形とる元絵は、筆で書かれているため、その筆の繊維の流れまで刀の引き押しで表現する。
とても気の遠くなる作業だ。

この内田職人が使う道具の一つ 突彫り刀
これもまた、特別なもので、内田職人は、自分が死ぬまでの分は確保していると言うが
自分に合う粘り強い刀を制作する職人も、もういないという。

「寂しいけど 俺の代で終わりだな…」


その言葉が、私の胸に刺さっている。

私にできる事
終わりを決めるのは本人次第
しかし、周りの環境が変われば想いも変わる
もっと、スゴサを分かってもらえれば、
刀ももっと高く購入すると言えば 作る人も出てくるかもしれない

その伊勢型紙 内田職人の手掛けた 伊勢型紙灯り 職人プレミアムショップで
内田職人直筆サイン入り鑑定書付で 販売いたします。
発売開始は2月中旬


日本人に、日本の職人の想いが届きますように…。